剃刀負け

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一昨日のことだ。
新年会の翌朝を「あわづグランドホテル」で迎えた俺は、ホテルの洗面所で、備え付けの安全剃刀(かみそり)を使って髭を剃っていた。
すると、安物の剃刀らしく剃り跡から点々と血が滲んできた。所謂(いわゆる)「剃刀負け」というやつだ。
「剃刀負け」?
そこで突如として、疑問が浮かんできた。
「剃刀負け? 果たしてそうだろうか?」
剃刀が勝ったのか負けたのか、どちらかを選ばなければならないとするならば、剃刀の勝利ではないのか?
もしこれが、俺の顔が何ともなくて、剃刀の刃が欠けていたのであれば「俺勝ち」、「剃刀負け」だろう。だが、俺の方が傷付いていて剃刀の方はぴんぴんしている。
これのどこが「剃刀負け」か。「剃刀勝ち」の「俺負け」ではないか。
どう贔屓(ひいき)目に見ても俺は勝ってないだろう。無念ではあるが、負けを認めざるを得ないところだろう。ここは。
いいとこ引き分けだ。
それなのに、「剃刀負け」?
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ここで、あなたは、「いや、『剃刀負け』というのはそういうことでない」と思うかも知れない。「『剃刀負け』というのは『剃刀に負けた』とか、『剃刀によって生じた負け』とか、そんな風に解釈すれば良いのでは」のように言い出すかも知れない。
# 「別にそんな話はどうでも良い」という人は今はちょっとあっちで待っててね。おじさんは反対意見の人と少し話があるからね。
で、「いや、別に『剃刀負け』という表現で良いのではないか」というあなた。そう、あなた。
では仮に、あなたが、ボブ・サップと K1 で戦ったとする。仮にだ。
で、まあ当然ボブ・サップが勝ったと。
# 「いやいやいや。俺が勝つだろ。そんなもん」と言う人は、ちょっと今だけあっち行っててね。話がややこしくなるからね。
あなたが負けたわけだ。残念な結果だが仕方がない。色々と言い訳をしたいかも知れないけれど、まあ結果は結果なので受け入れてほしい。
無傷のボブ・サップと傷付いて倒れているあなた。
でだ。これを「ボブ・サップ負け」とあなたが表現して、ボブ・サップが納得するか?
「あなた負け」の「ボブ・サップ勝ち」だろ、そんなもん。
「いやいやいや。俺なら納得させられる」と言う人。あなたボブ・サップと戦って負けてるんだからね。そこんとこ忘れないように。
「いやそれでもボブ・サップから目をそらさずに楽勝で『ボブ・サップ負け』と言える」という人以外は、「剃刀負け」という表現を使っちゃ駄目。
え? 「同じクラスの田中くんも『剃刀負け』という言葉を使ってた」?
あんた、田中くんに「死ね」って言われたら死ぬんか?
え? 「クラスの人がみーんな『剃刀負け』って言ってる」?
みんなって誰と誰やねん。どうせ田中くんだけやろ? 田中くんの話は、もういいの。
あなたはどうなの? という、あなた自身の姿勢が今まさに問われようとしているんよ。
え? どうなのよ。そこのところ。一体全体。
……まあ、「剃刀負け」の話はこのくらいにしといてあげよう。
同じように、能登の名物「ひっぱり餅」についても、言いたいことは色々とある。
今は多くを語らないが。
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「ひっぱり餅」? ひっぱったのは餅でなくて多分人間だろう。
だとしたら「ひっぱり人間」じゃないか。で、餅の方は「ひっぱられ餅」とか何とか。
ここで、「作用・反作用の法則」とか言い出す人がいるかも知れない。「物理的には同じように力を受けていて、どっちが『ひっぱった・ひっぱられた』とか言えない」とか、言い出すかも知れない。
或るいは、「日本語の文法は英語などとは違って…」などと言い出す人がいるかも知れない。
まあ、そういう反論がある方には、再度ボブ・サップに登場願ってあなたの首をひっぱってもらうことになるのだが。
この話はまたいずれ改めて。ゆっくり。