イノベーションはマーケット・インでは生まれない

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■ 「イノベーションはマーケット・インでは生まれない」

素晴らしい記事を紹介したい。

『Web 2.0時代のソフトウエア開発手法』

記事では、三つの視点の変換が述べられているように思う。

  • 視点の変換 1.
    「技術先行」→「ニーズを満たすものを作る」
    「良いものが売れる」→「売れるものが良いもの」
  • 視点の変換 2.
    「イノベーションはマーケット・インでは生まれない」→「プロダクト・アウトの復権」
  • 視点の変換 3.
    「マーケット・イン/プロダクト・アウト」→「コンセプト・アウト/デマンド・イン」

「コンセプト・アウト/デマンド・イン」という考え方は、まさに目から鱗だった。
なんだか頭の中の霧が晴れた思いだった。

■ 商品像を作るのは顧客なのか

一つ目の視点変換は、重要だと思う。
開発者の視点でなく市場からの視点で「良い商品」かどうかが決まるべきだ。
だが、一つ目の視点変換に満足してしまい、「ニーズを集めさえすれば良い商品が生み出せる」と考えてしまうことには、疑問がある。
それだけではうまく行かないと思うのだ。

「商品は顧客が作る」

これは、以前私がいたソフトウェア開発現場のスローガンだ。
そして、具体的な開発は、

  • 顧客の要望が商品像を決める。
  • ゆえに、営業が顧客の要望を集めて商品像を作る。
  • 開発は、その商品像を形にするだけ。

という原則に従うべし、とされていた。
「商品は顧客が作る」という言葉は、確かに正しい。
ひとりよがりになりがちな開発者への警告文として重要だろう。
美しい言葉だとも思う。
けれども、開発者であった私は、この言葉にずっと違和感があった。
私には、顧客の要望を集めただけで良い商品が作れるとは思えなかった。
何故なら、「まだ市場にないものに関するアイディアは、顧客からは得られない」からだ。
例えば、電話というものがなかった時代に、顧客の要望で電話という商品が生まれただろうか。
否。生まれるわけがない。
現に、電話が発明されたときの人々の反応は、「既に郵便というものがあるのに、誰がそんな器械を買うだろうか」というものだったのだ。
発明された後でもこんな反応だった電話が、市場のニーズから生み出されるはずがない。
同様に、コンピュータがなかった頃に、コンピュータが市場のニーズから生み出されたとは思えない。
既存のニーズを集めたって新しいニーズを生み出すことは出来ないし、既存のニーズが無から新しいものを創り出したりしないと思う。

■ 開発者のモチベーション

開発者としては、寧ろ、顧客に、「あ! そうか。初めて気付いた。俺こんなのが欲しかったんだ!」と言わせたい。
確かに「開発者の驕り」という部分は有るだろう。
だが、それは開発者としての市場に対する精一杯の提案なのだ。
「新しいものを生み出したい」という気持ちは、「ものづくり」を行っている人に共通の思いではなかろうか。
「いかに顧客の要望通りのものを作るか」ではなく、「顧客に様々な提案をして、顧客と共に新たな要望を創っていきたい」のだ。
この気持ちは大切にしていきたいと思う。