質問を受ける態度
先日米国で幾つかの技術系セッションに参加したのだが、その折に感じたことを書いてみる。
日本で技術系のセッションに参加すると、聴衆は結構皆行儀が良いというか、大人しくきちんと話を聴いている。
ただし余り反応もなく、話に関心があるのかないのか、賛同しているのかどうかが、比較的分かりづらい (他人のことは言えないのだが)。
反応なくじっと聴いているので、うけなかったのかと思うと、事後のアンケート結果が割と良かったりする。
それに対して、米国のセッションでは、全然雰囲気が違う。聴衆のセッション中の反応が実に豊かだ。賛同の声を上げたり、途中で拍手したり、ジェスチャーで表現したり、質問したり、ちゃちゃを入れたり、頷いたり。
また、ジョークが当然のように入り、聴衆はきちんとジョークに反応する。
どうやら、聴衆の方にもセッション自体の価値を上げる責任がある、と考えているようなのだ。
特に感じたのが、よく質問をする、ということだ。セッションの後に、質問が何十分も途絶えない、ということがよくあった。
質疑応答は重要である。質疑応答によるその場での直接的な遣り取りによって、参加者は「独りで本や Web で学ぶ」ことでは得られないセッションならではの生の知識を得ることができる。講師にとっても重要なフィードバックの機会となる。
このような活発な質疑応答には聴衆の参加意識が重要だ。そして、それ以上に講師の方の質問を受ける態度が重要なようだ。
私は、米国でのセッションの質問者の態度に感動を覚えたが、それ以上に講師の方が質問を受ける態度にも感心した。その幾つかのポイントを次に挙げてみたい。
質問を受ける態度:
-
「質問の復唱」 内容 質問を講師の言葉で復唱していた。 効果 これには二つの意味があると思う。 - 「あなたの質問を私はこう理解しましたよ。こういう理解に基づいて私は回答するんですよ」と質問者に確認する意味。
- 質問者以外の聴衆に質問内容をしっかりと伝える意味。これは、「質問者と私の1対1のコミュニケーションではなくて、参加者全体でのコミュニケーションなんですよ」という宣言にもなる。
-
「質問の整理・分類」 内容 ホワイトボードなどに箇条書きしていくことで、複数の質問を整理・分類していた。 効果 これにも幾つかの意味があると思う。 - これまでの質問を参加者が理解しやすくなる。
- 全参加者で問題を共有することができる。
- また、ブレインストーミングの効果がある。
-
「質問の評価」 内容 回答の前に質問自体を評価する。質問を聞いた講師の一言目は、質問に対する評価になっていることが多かった。先ず、「それは重要な点ですね」とか「良い質問です」とか言って、その後で回答を述べていた。 効果 こうすることで、質問の価値を上げ、質問者のモチベーションを上げることができる。 -
「結論を先に」 内容 回答の頭で結論を答えていた。「まさにその通り」や「それはXXXです」のように、質問への端的な答えを先ず言って、その後でその理由や詳細な説明を話していた。 効果 理由や詳細を長く話してその後で結論をいうより、断然理解しやすい。 -
「真摯な回答」 内容 きちんと答えていた。答えをぼかさない。質問の意味が分からないときは、分かるまで聞き返し、適当に答えないようにしていた。 効果 質問を大切に扱うことで、質疑応答の価値を上げられる。 -
「質問者が偏らないように」 内容 均等に質問をとっていた。新たな質問者を優先していた。 効果 これも「1対1のコミュニケーションではなく参加者全体でのコミュニケーション」とするために重要だ。
ディスカッション
コメント一覧
http://karua.at.webry.info/200704/article_3.html
質問を受ける態度(翔ソフトウェア)より、
アメリカと日本でのセッションに臨むスピーカーとリスナーの文化(?)の違いについて取り上げられています。
質問をする態度
Fujiwoさんの日記で技術系セッションに対する日米の違いみたいなのが「質問を受ける態度」で書かれていた。 自分自身、海外経験がないのでこういうのもなん…