舞美人
一昨年、昨年と正月の酒は、福井県鯖江市の加藤吉平商店の『梵』だった。ここは無添加の純米酒しか造っておらず、長期氷温熟成されたその旨さは堪らない。熟成された旨みを持ちつつも、驚く程フレッシュでフルーティな酒が多いのが特徴だ。ちなみに、私が好きなのは看板商品である吉平。福井の酒というと、うちから徒歩10分の黒龍酒造 (福井県永平寺町) が有名で、『梵』はよく、ここの『黒龍』と比較されるが、私はどちらかというと『梵』の方をよく飲む。
しかしながら、今年の正月の酒は、福井県福井市の美川酒造場の『舞美人 2004年醸造 純米吟醸 常温熟成 無濾過本生原酒』というのにしてみた。
この酒は、知人に昨年十二月に紹介されたものだ。
どんな酒か、美川酒造場の Web サイトから引用してみよう。
2004年新酒として木槽(きぶね)で搾った後、全くの手を加えず自然と蔵が育てたお酒です。2004年タンクに貯蔵後、蔵の中で常温熟成させた純米吟醸の無濾過本生原酒です。このような状態で貯蔵されたお酒は、非常に珍しく、純米でありながら火入れも行わず自然熟成させるということは一種の賭けでもありましたが、杜氏の強いこだわりから出来上がったお酒です。
試飲された酒屋さんたちのご要望により、今月新発売いたしました。
深みのある味わいと酸味の調和がとれた熟成酒。琥珀色の優しい甘味が、料理の味を引き立てます。常温または燗酒で飲むのが、蔵元・杜氏のおすすめです。アルコール度数の高い原酒ですので、ロックや1割程度ミネラルウォーターを加えていただくと、より一層飲みやすく、違った味わいをお楽しみいただけます。
■ 美川酒造場
昨年の年末に美川酒造場に行ってきた。
その酒蔵は、福井県立図書館の近くの細い道を奥に入った、かなり判り難い場所に在った。蔵元と店長が夫婦でやっている小さな酒蔵で、そのお二人が迎えてくれた。東京の知人から聞いてきたと云うと、最近東京で試飲会があったとのこと。それから、この酒が限定五百本であることなどを教えてくれた。
■ 舞美人 2004年醸造 純米吟醸 常温熟成 無濾過本生原酒
美川酒造場では、一升瓶を一本購入してきた。
正月用に買ったのだが、待ち切れず大晦日の夜に開封した。
グラスに注ぐとこんな感じ。四年間常温熟成させたというだけあって、かなり黄色い。
口に含んでみて吃驚した。実に旨い。香りといい味といい、こんな日本酒は初めてだ。今まで飲んだどの古酒の味わいとも異なる。
熟成香がすぅーっと鼻に抜ける。甘味と酸味が絶妙のバランスで、有り得ないようなコクが有る。舌の上にとろりとくる飲み心地で何時までも味わっていたい感じ。日本酒よりも、ハンガリーの貴腐ワインのような印象だ。
厚みのある飲み応えで、濃い味の肴にも負けない。塩辛などの珍味類は勿論、パルミジャーノ・レッジャーノと一緒でもいけたくらいだ。
■ 正月のその他の酒
石川県白山市鶴来本町の小堀酒造店の『萬歳楽 白山 大吟醸古酒』と飲み比べてみた。
こちらは、大吟醸を三年間熟成したもの。上のに比べると、色はやや薄め。
味わってみると、同じ古酒でも全く違っている。こちらは、熟成香に加えて大吟醸の上品な吟醸香がして、ずっと辛口で、あっさりと上品な味わいだ。良くも悪くも予想を裏切らない味わい。
もう一本、普通の生酒として、福井県福井市の常山酒造の『両替屋秘蔵 生詰』も開けた。
こちらもどっしりとした甘みとこくがある酒だ。
今年の正月は、上記三本の日本酒とサントリーのザ・プレミアムモルツ黒、それからデザートワインとしてドイツのプファルツ地方のリースリング アウスレーゼを楽しんだ。
このうち、舞美人は半分ばかり残っている。まだ暫くは楽しめそうだ。
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